センヤワ

センヤワ

Rully Shabara/Wukir Suryadi


センヤワ4.jpgインタビュアー=山本佳奈子(Offshore)

◯ハプニングから始まったSenyawa

――最初、2人はいつ出会ったんですか?

Rully Shabara(以下、Rully): 2010年です。

――どんなきっかけで出会ったんですか?

Rully: ステージ上で会いました。Wukirのソロライブのときで、即興でセッションしました。それが2010年、ジョグジャカルタでの出来事です。

――WukirはSenyawa結成以前も同じ楽器を演奏していたんですか?

Wukir Suryadi(以下、Wukir): はい、ソロでしたが楽器は今と一緒です。

――RullyはSenyawa以前はどんな活動を?

Rully: Zooというバンドで演奏していました。Zooは実験的なパンクバンドで、コンセプチュアルです。

――Senyawaとしてデュオで活動していこうと決めた理由は?

Rully: 特に理由があったわけではないです。ハプニングです。録音してみよう、となってリリースしました。それからいろんな人がSenyawaとしての演奏を依頼してくれるようになり、その依頼が絶えないというだけなんです。

――当初はジョグジャカルタで主に演奏していたんですか?

Rully: いや、主にインドネシア国外です。

――これまで何回Senyawaとして演奏してきたか把握してますか?

Rully: たぶん、100回以上でしょうね。毎月どこかへ行っています。でも楽しいですよ。ヨーロッパやオーストラリア、たまにアメリカも行きます。

――contact Gonzoの塚原悠也さんが取ったRullyへのインタビュー動画を見ました。Senyawaの音楽ジャンルは「メタル」であると。

Rully: もし音楽にジャンルが存在するなら、メタルと定義します。でも実際は音としてのメタルではないですよね。象徴としてのメタルです。

――Wukirは以前に伝統音楽も演奏していたんですか?

Wukir: そう、打楽器や笛を演奏していました。

――かつ、ロックも聴いてきたんでしょうか?

Wukir: そうです。たくさん。世界中のロックを聴いてきました。

――楽曲はどのように制作していますか?

Wukir: ただ、セッションします。そして即興。

Rully: 昔の楽曲のほうが作曲していましたね。最近は即興を取り入れることが多いです。

――インドネシアでは、曲における歌詞でどんなことでも歌えますか?

Rully: 今は自由です。90年代はそうもいきませんでしたが。特にパンク、HIPHOP、ハードコアなどで歌われる内容は強烈ですよ。何を言っても大丈夫です。ただし宗教以外。

――Rullyは、Senyawaでどのような歌詞を歌っているんですか?

Rully: 通常の歌の歌詞とはちょっと違いますね。ただ、「詩」でしょうか。特にアルバム『Acaraki』では、人間と自然の関係について詩にしています。また、ときどき即興で言葉を紡いでいきます。

◯オルタナティブ・スペースでの演奏ではなく、音楽コンサートを定着させたい

――近々、インドネシアで単独コンサートを行なうんですよね。企画した理由は?

Rully: 単独コンサートを行なえるタイミングが来たと思いました。今まで、海外では単独コンサートをやったことがあるんですが、インドネシアで一回も単独コンサートをやったことがなかったんです。時が来たので、インドネシアの人達に私たちのパフォーマンスを見せたいと思いました。

――開催地はジャカルタとのことですが、なぜホームのジョグジャカルタではなくてジャカルタで?

Rully: インドネシアの首都ですから。

Wukir: そう、中心。

Rully: 例えばある国を攻撃するとすれば、首都を攻めるし(笑)。

Wukir: 会場は、GKJ(Gedung Kesenian Jakarta)というところ。すごく古い劇場で、クラシックのオーケストラなどによく使われてる。

Rully: すごくフォーマルで、エレガントな会場です。

――今回のAsian Meeting Festivalの会場、The Projectorも古いですが、似てる?

Wukir: もっと古典的な劇場かな。

Rully: ドーム状になってるんですよ。

――ロックバンドもコンサートを行うような場所ですか?

Rully: うーん、あんまりないですね。

――では機材も持ち込みで?

Wukir: そう。機材も、プロジェクターも持ち込みで。私たちはジョグジャカルタから約10人のチームで、バスで行くんですよ。

――ジャカルタの人たちは、今、Senyawaのことを知っている人が多いですか?

Wukir: 少しの人しか知らないですね。

Rully: もっと多くの人に聴いてもらいたいですね。一般の人にも。

――何人ぐらい来そうですか?

Wukir: 400人ぐらいかな?

――ジョグジャカルタでは気に入っているコンサート会場ありますか?

Wukir: ない。

Rully: あんまりないですね。

Wukir: ジョグジャカルタでもあまりライブをしてません。小さな会場では何度かやっていますが、どちらかと言うと、オルタナティブ・スペースとか、友達のやってる小さいスペースとか。

Rully: 借りようと思えばコンサート会場を借りることもできるんですが高額です。なのでDIYなスペースで演奏することが私たちの周辺では普通ですね。インドネシアでのコンサート会場って、メインストリームの音楽のための会場なので。

Wukir: 今度のジャカルタでの単独コンサートでは、私たちの数ヶ月分の収入を投入してるんです。

――いくらぐらいですか?

Rully: だいたい6千万ルピア。6千米ドルぐらいですね。

Wukir: 大金を投入してでも、パワーのあるコンサートを作りたいんです。ジャカルタを蹴っ飛ばすために!(笑)お金を払えば、大きなコンサートはできますよ。ただ、まずは首都ジャカルタでやる。それから、他のインドネシアの地域でも演奏したいんです。オルタナティブ・スペースばかりでなくて、音楽コンサートとして。こうすることで、多くの人がライブ・コンサートに興味を持ってくれるはずで、自分たちの活動のためにもなります。

――ジョグジャカルタでも、DIYで何か続けるって大変ですか?

Rully: うん、そうですね。でもみんなで集まって自分たちのシーンを作って、観客も増やすように努力してます。少しずつ作用してきていますね。

――ジョグジャカルタの音楽シーンについて少し教えてもらえますか?

Rully: たぶん、インドネシアの中では一番音楽シーンが活発だと思いますよ。東南アジアのなかでも一番活発かもしれない。ただ、すべてのことがすごいスピードで起こっています。とても速い。ボルネオ、スラバヤ、スマトラにもDIYシーンはあって、素晴らしい実験的な音楽家がいます。

Wukir: いろんなシーンがありますね。HIPHOP、メタル、パンク、ハードコア。それぞれ別のコミュニティがある感じです。

◯アジアには強い実験音楽の文化がある

――ジャカルタでの単独コンサートの後の予定は?

Wukir: 横浜で開催されるTPAMに出演して、あとメルボルンでダンス・カンパニーとの共同制作があります。あとWomadにも出演する予定です。

――リリースの予定は?

Wukir: 新しいアルバム制作に取り掛かることを決めたばかりです。2017年に、1ヶ月まるまるオフを取って、アルバム制作に集中することにしました。

Rully: ドイツのレーベルからLPでリリースされる予定です。

――インドネシアで自主レーベルを立ち上げたりする予定は?

Wukir: 私は個人で小さいレーベルをやっていますよ。カセットテープだけのレーベルを。自分のソロ音源や、友達の音源をリリースしてきました。確かSenyawaもカセットテープでリリースしましたね。

――レーベルの名前は?

Wukir: 『TILIS』。あ、SILIT

Rully: そう!『TILIS』。

――どういう意味ですか?

Wukir: アスホール!(大声で)

Rully: (爆笑)

Wukir: 自分の故郷のスラングで、SILIT=アスホールなんです。それを逆さまに。

――普段の生活はどうですか?何か別の仕事をしたりはしていますか?

Rully: いえ、今は音楽に集中してますね。

Wukir: 私もです。Senyawaと、あと舞台芸術プロジェクトに関わったり、展示もやったり。

――ダンス・カンパニーや、劇団とのコラボレーションはどういう感触なんでしょうか?音楽以外で、そういった他の表現者とのコラボレーションをよく行なっていますよね。

Wukir: 面白いですよ。知らない街に初めて行ってみるような感覚。以前は問題を感じたこともありましたが、得られることはいろいろあります。タイミングを考えたり、指揮者とどうやるか、また舞台監督のキャラクターはこうだからこうやろう、とか。

Rully: うん、そうですね。新しいものに出会うことを楽しんでいます。

――Asian Meeting Festival、シンガポールの2日間が終わりましたが、いかがでしたか?

Rully: 大好きです。

Wukir: いいですね。参加している音楽家のみなさんの演奏好きですし、一緒に話せるし、また、先のつながりにもなりますね。

Rully: あと、みんなアジア人だってところ。ネットワークをつくるのにとても良いし、希望があります。アジアにはとても強い実験音楽の文化がありますから。